『日本資本主義発達史講座』趣意書
野呂栄太郎
世界経済恐慌の発展は全資本主義体制の、従ってまた日本資本主義制度の根底を揺り動かしている。資本主義の一般的危機の先鋭化、その上に進行しつつある 恐慌の破局的深刻化、国際的諸対立の脅威的緊張、そして階級対立闘争の不可両立的激化——すべてこれらの、もはや
急迫せる情勢に転倒せる帝国主義者の脳裏には、恐らく戦争とファシズム以外の考えは浮かび得ないであろう。しかしながら、経済的発展の行詰まり、政治的 支配の動揺、社会情勢の不安等々の解決は、かかる一連の事態の変化を必然にし、不可避にしたところの根本的矛盾を
かかる緊切なる当面の要求に応じて生まれた本講座は、歴史的事実の単なる
特に問題解決のかかる諸条件を明らかにせんがために、日本資本主義発達の諸条件、その本質的諸特徴、その基本的諸矛盾を全面的に分析し、根本的に究明す ることは、もとより一人の
本講座は、今日世に問い得る限りにおいて、日本資本主義の最も包括的な科学的研究であり、その本質的矛盾の最も根本的な分析である。しかも、われわれが 当面せる諸問題の根本的解決のためには、本講座はわずかに解決の鍵を提供するにすぎない。われわれは、日本資本主義の危機からの革命的活路を身をもって切 り開かんとする多数読者の積極的努力によって、始めてさらに完成せらるべきことを期待する。社会的矛盾の中に真理を求め資本主義社会の発展の法則を究明せ んとする一般諸君の検討を待望しつつ、あえて本講座を世に問わんとする所以である。
—— 一九三二年六月——
底本:「野呂栄太郎全集 下」新日本出版社
1994(平成6)年12月5日初版発行
入力:山田剛 校正:川向直樹 2004年2月18日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫 (http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
野呂栄太郎記念碑(塩沢富美子建立)
渋谷から六本木に向かう西麻布の永平寺別院 長谷寺に記念碑がある。
0 件のコメント:
コメントを投稿